ワーパパ・ワーママとのコミュニケーションの重要性

ダイバーシティ&インクルージョンを促進しようとしているDirbatoでは、促進させるためのヒントを前編・後編に分けて考察しています。前回の記事では、育児・介護休業法の法改正や企業内での取り組みについてご紹介してきました。今回は、画一的な制度とは言い難い、周囲からのサポート体制について見ていきたいと思います。

1.ワーパパ・ワーママの活躍を阻む要素

パーソル総合研究所によると、下記要素が実現されていないと、ワークライフバランスを保ちながら成果を出せないという調査結果が出ています。

・職責・職務に応じた期待がされていない
・能力・スキルを十分に活かせる仕事アサインがされていない
・時間あたりアウトプットでの評価がされていない
引用:パーソル総合研究所「ワーキングマザー調査」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/working-mother.pdf

育児による時間の制約があるがゆえに、知らず知らずに会社からの見方が変わり、適切な期待がされなくなっているようです。結果的に、本人の意図しない異動や業務内容を強いられるという実態があるようです。

さらに、自分が声を上げても変わらないという“職場内対話無力感”により、会社に伝えることすら諦めている人もいるのです。“職場内対話無力感”とは、意見が尊重されない職場や、どうせ分かってもらえないだろうという個人の固定概念によって醸成される無力感のことです。この無力感から会社や上司との対話が充分にできなくなっているのです。
そのため、本人が会社に希望を伝えられず、理想の働き方ができなくなるという構造が成果を出せない環境を生み、活躍を阻む要因になっていると考えられます。

2. ワーパパ・ワーママが実際に感じること

今回、Dirbatoのパパ・ママ社員に仕事と子育てをする上で感じることをインタビューいたしました。職場の環境、子どもの年齢や時代背景、家庭環境等によって感じることにそれぞれ違った特徴があるようです。

<Episode1>

―出社前に保育園に送ろうと思うと、自ずと子どもの起きる時間も早くなり、夜帰宅すると子どもの目が覚めてしまう。睡眠不足に繋がるので、子どもへのストレスが気になっていた。

2人のお子さんの育児をするAさん(男性)は、お子さんが産まれた当時は以前の職場で出社勤務をしていたため、出社前に保育園へ送り、仕事終わりに迎えに行くというのが毎日の習慣でした。
自身の仕事の時間に合わせて育児をしていたため、子どもへのストレスが気になっていたと話します。
Dirbatoへ入社し、現在はリモート勤務に変わり、家の近くに仕事用の部屋を借りたり、送り迎えの時間に合わせて仕事を調整したり、育児とバランスを保って仕事ができているようです。

「仕事部屋を、会議等の予定に合わせて、午前中は私、午後は妻、家にいる時は子供がいる中で仕事する、のように使い分けて育児と仕事を両立しています。習い事の送り迎えで、終わるのを待っている間会議等は入れないよう調整して車の中で作業することもあります。おかげで子供と向き合える時間が増えて、お互いのストレスはすごく減ったと思います。」

社内のワーパパ・ワーママをサポートするには、社員の先にいる子どもの存在も忘れてはいけません。自身とは違った働き方をしていることを理解し、子どもとの時間を奪うことが無いよう工夫し合うことが大切です。

<Episode2>

―ワーママはキャリアが停滞することを当然のように飲み込んでいるけれど、本来とても苦しいこと。女性が活躍する時代、妻のキャリアのために夫がサポートすることは非常に重要。

先日2人目のお子さんが産まれたBさん(男性)は、奥様のキャリアを支えるためにも育児に積極的な姿勢を見せています。
共働きができると経済的な余裕も生まれ、のびのびと育児ができていると実感しています。

「奥さんの産前産後休業中は給与が入ってこないので、自分だけの給与に頼ることになります。病院への支払い等まとまったお金が必要になるので一人目の時は結構苦労しましたね。」と、苦労した経験を話してくれました。

また、等級に応じて各保険料が決まる“標準報酬月額”の仕組みを調べ、奥様と上手く役立てながら育児を行なっていましたが、以前の職場で間違った情報の共有を受けてしまった経験があるようです。

育児をする上で金銭面は大きな課題となりますので、妻の収入を頼ることは悪いことではありません。企業も制度に関して社員が間違った選択をしないよう、適切なアドバイスをできる体制を整えておくことが必要です。

<Episode3>

―子どもといる時間を優先し、前職では、続けたかった管理職のポジションを泣く泣く降りた。社内初の時短勤務だったので、当時は肩身の狭い思いをしていた。

中学生のお子さんを育てるCさん(女性)は、女性だけで育児をすることが当たり前だった時代に育児を行なっていました。Cさんは管理職として夜遅くまで仕事に励んでいましたが、お子さんからの「他の家のお母さんって家にいるみたいだよ。」という、何気ない一言にひどくショックを受けたことが管理職のポジションを降りるきっかけになったようです。
最近は、男性の育休を推奨したり、企業が様々な取り組みを行なったり、パパ・ママだけでなく育児をしない方々も意識が変わり始めました。

「お客さん先でもお迎えは男性が行なっているという方が多いです。休みもとりやすい雰囲気になったし、昔より両立しやすくなったのではないかと思います。」

まだまだ課題は残る仕事と育児の両立ですが、社会全体でワーパパ・ワーママをサポートする土壌ができ始めているようです。ワーパパ・ワーママを受け入れる雰囲気を作ることが、働きやすさを感じられる最初のカギです。

 

3. ワーパパ・ワーママに必要なサポート

『女の転職type』では、女性に対して、ワーママにはどんな制度やサポートが必要かアンケートをとったところ、約6割の女性が『会社・上司の理解』と回答しました。


出典:女の転職type
https://woman-type.jp/academia/discover-career/data/vol-27/
 

会社や上司の理解を得るというのは、相手が子育てをしたことがない方ですと難しい課題だと考えられますが、企業はどういった取り組みをしているのか調べてみました。

①キリンホールディングス株式会社

子どもがいない社員に対し、子どもがいるという想定で時間制約のある働き方をする「なりキリン」という制度を導入。期間中は出社時間と退社時間が定められ、残業は禁止というのが基本ルール。さらに、保育園(電話の主は会社の人事部)から電話がかかってきた場合はそこで退社しなければいけないという設定です。時間内に仕事を終わらせるという姿勢がチームに影響し、社員同士補い合う文化ができています。

②株式会社ポニーキャニオン

パパ・ママ社員に対し、面談や交流の場の設置などはもちろん、パパ・ママ社員の上司に対しても子育てに関わる研修を行い、双方の育児への理解を深める仕組みを醸成しています。上司も子育てについて知ることにより、肩身の狭い思いをせず、相談しやすい環境づくりをしています。

どちらも、上司やチームメンバーに状況を理解してもらえる機会になり、好影響を与えてにいるように感じます。仕事を続けたい、希望の仕事をしたいと思うワーママ・ワーパパが苦しい決断をしないためには、時短勤務やリモートワークなどの制度を確立することも大切ですが、チームメンバーや上司が育児について理解することが最初の一歩です。

4. まとめ

子育てをする方々の活躍は、ダイバーシティ&インクルージョンを推進させる上では非常に重要な要素です。会社とワーパパ・ワーママ、お互いの固定概念から無力感を生まないために、育児をする人の働き方や希望を知ろうとする姿勢が重要です。

法律や社内の制度が整備されているから仕事と育児は問題なく両立できるというわけではありません。社内での肩身の狭さや雰囲気によって、働きやすさが大きく変わり、パパ・ママだけでなく子どもへのストレスにも繋がってしまいます。 ワーパパ・ワーママが望まぬ決断をしないために、上司や周囲が育児をしている方とコミュニケーションをとり状況を理解することで、仕事と育児のバランスをとっていけるのではないでしょうか。


         

執筆者
H.Gokita
株式会社Dirbato(ディルバート)
コーポレートグループ Employee Success 広報

大学卒業後、転職エージェントにてIT業界をメインに、キャリアアドバイザーとして従事。エンジニアやITコンサルタントの方たちのキャリアアップや多様な働き方の実現をサポート。その後、Dirbatoへ参画し、現在は広報として社内外への情報発信を担当。各種社外向けメディアの運営やイベント企画、社内イントラなどの運営を主担当として推進している。個人のTwitterアカウントでは仕事中の様子等を日々ツイートしている。
Twitterアカウント:https://twitter.com/dirbato_gokita
監修
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。