D&I定着のヒント:②Z世代との関係性構築

前回は、「Z世代の考え方や価値観」を中心に、ダイバーシティ&インクルージョンで活用できる点を説明しました。今回はZ世代との関係性構築と題して、Z世代の情報収集方法や悩んでいること、職場でできるサポートについてご紹介します。

1.Z世代の情報収集

野村総合研究所(NRI)は2021年12月11日と12日の2日間、全国の15~69歳までの男女約3000人を対象に、消費者の価値観や行動変化を調査する「生活者年末ネット調査」を実施しました。

前回の説明でもZ世代の情報収集について触れましたが、「インターネットによる情報収集」においては、5年前の調査で主流だった「Google」や「Yahoo!」などの検索エンジンを使用した情報収集がSNSを利用した情報収集へとシフトしており、特にZ世代はSNSが主要な情報収集ツールになっていることが明らかになりました。Z世代が最もよく使うSNSは「Twitter」(77%)で、女性に限定する場合は「Instagram」(78%)となっています。

 
 

他世代よりも膨大な情報が流れてくることで、消費したいと思う頻度や対象が増えたことや、一人当たりの興味関心が複数あり支出を分配しなくてはいけないという背景もあり、Z世代は「トキ消費」「コト消費」の「疑似体験」としてSNSを活用しています。
また、情報を取捨選択し、その情報を必要だと思っても(興味を持っても)、すぐには行動(消費)に移さない傾向があり、その消費をわざわざ自分がする必要があるのか、という判断材料にもなっているようです。

複数アカウントを使い分けて情報を取捨選択・分類する、画像や動画を活用して加工や修正が少ないリアルな状態の情報を確認する、分かりやすい説明を指示するといったZ世代の傾向は、テレワークが増えた現在の環境におけるコミュニケーション改善のヒントになりそうです。

一方、SNSでは業務遂行に必要な情報は収集できず、コロナ禍におけるテレワークはZ世代の孤独感や不安感を増長させる環境を生み出しました。

2. テレワークが生み出した孤独感や不安感

パーソル総合研究所が会社員らを対象にした調査(2021年2月24~25日に全国の就業者3000人を対象にインターネットで実施)で、20代のテレワークを利用する就業者は出社のみの勤務者より仕事に対する幸福感が低いことが分かりました。業務への慣れがなく、悩みを抱えやすい傾向にあることが要因とみられるそうです。

 
 

対面での職場では、日々の会話で人間関係を構築しながら、業務内容の理解を深めていきました。
テレワークになると、これまで「何となく」見ながら覚えた業務を分かりやすく説明する必要があります。「みんな同じ」であることが前提の同質性の高い集団ほど、「暗黙の標準」が支配しがちとなり、業務に慣れていないZ世代は、見えない壁からはみ出ないように神経をすり減らしているのではないでしょうか。

これはZ世代に限った事象ではなく、コロナ禍で転職し、新たな職場でテレワークを開始した人にも該当すると考えられます。新しい職場の文化が見えにくい状況において、新しい仲間たちと業務を遂行していくストレス負荷は大きいと言えるでしょう。

3. 職場のサポート

「暗黙黙の標準」の存在に気づいて改善していけるよう、職場でもサポートしていく施策が必要です。

①メンターシップ機会の拡大

それぞれの持ち味や価値観を知るために、困っていることややりたいことなどを否定せずに聞いて、受け止めることで心理的安全性を確保し、信頼関係を構築する必要があります。
例えば、打合せに少し雑談を差し込む、オンライン朝会で最近起きたことを語ってもらうといった施策は、実践している企業も増えているのではないでしょうか。
加えて、「自分を信頼してくれるリーダーが欲しい」、「上司からフィードバックを受けたい」等、メンターシップを上司に期待するZ世代も増えています。1on1を導入する企業も増えてきましたが、彼らの期待に応えていくためには、マネジメント職がメンターシップを学ぶ機会の拡大も必要です。

②情報の見える化やルール化と共有

業務に必要な情報の見える化や、業務はいつまでに完了させなければならないか、誰に報告すればよいかというルール化も必要です。
これまでは同じ職場で、状況を見ながら確認・判断することもできましたが、テレワークではお互いの状況が見えません。ITツールを活用し、情報やルールを見える化・ルール化するだけでなく、自身の健康状態やタスク進捗状況を見える化することも大切となってきます。
また、ナレッジ共有も大切となってきます。
業務内容や悩みを共有するだけでなく、上司やリーダーがビジョンや目標を説明したり、自身の経験してきたことを共有したりする機会を定期的に設けることで、チームビルディングの一助となります。

③指導育成

中長期の目標を立てて、計画的に取り組む指導育成は、これまでも実施されてきましたが、外からどのように見られるかを気にする傾向にあるZ世代には、「自分がやっていることは正しいのか」「規範や期待から逸脱していないか」を確認するために、日々の活動やその時の感情を振り返る機会(場)を設けることが必要となってきます。
その機会を通じて本人の内省を促し、同時に指導者側からもフィードバックをすることで、客観的な自己理解や不足している能力を自覚することにつながり、自己認識力が高まっていきます。

働き方が多様化し、今後もテレワークが継続されることをふまえると、お互いの顔や行動が見えない中での関わりが増えていきます。評価プロセスの透明性を高め、フィードバック時のデジタルコミュニケーションでは、短時間でも接点を増やすことを心掛け、できる限りやりとりした内容を言語化していくことで、成長の自走サイクルを定着させることに繋がっていきます。

4. まとめ

信頼関係を構築したり、情報を見える化・ルール化したりといった施策を成功させるには、経営トップ・管理職・メンバーの「三位一体」の改善が必要になります。
例えば、経営トップが改善ビジョンを打ち出しても、上司(管理職)がまったく違うことを発言する場合は、改善は実行されずに終わってしまいます。これは、ダイバーシティ&インクルージョンの施策でも同じことが言えます。
施策が定着するには時間がかかりますが、定量的に状況を把握しながら、継続して改善していくことで、ステージアップする機会損失を防ぐことができます。
弊社に参画する新入社員・中途社員の方が、会社や一緒に働く管理職やメンバーと信頼関係を築きながら業務を遂行していただけるよう、今回の記事をきっかけに弊社としてサポートできることを見直していきたいと思います。


         

執筆者
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。