D&I定着のヒント:①Z世代の価値観を理解する

高年齢者雇用安定法の改定により、2021年4月より70歳までの雇用が努力義務となりました。我々の働く環境は、新型コロナ禍によるテレワークの普及だけでなく、ますます多様な人々と多様な働き方を認め合うことが求められています。
今回は、多様性を当たり前のこととして受け入れる傾向の強い「Z世代」の考え方や価値観への理解が、ダイバーシティ&インクルージョンの社内普及や定着のヒントになると考え、彼/彼女達の特徴や取り巻く環境を3回に分けてご紹介します。

1.Z世代とは?

欧米発の世代論のひとつで、1990年代中盤以降に生まれた人たちを意味し、26歳以下の世代を対象としています(2022年1月現在)。その他の分類としては、X世代・Y世代があります。

“A shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking.”

・X世代:1960年代中盤~1980年頃に生まれた世代
(自宅のテレビで情報収集)
・Y世代:1980年頃~1990年代中盤に生まれた世代
(ポケベル・ガラケー・PCメールでネットワーク作り)
・Z世代:1990年代中盤以降に生まれた世代
(SNSで情報収集やネットワーク作り))

 
 

参照)HR Review:「Z世代とは? 人事・採用が知っておきたい思考・行動の特徴」(ビズリーチ)

2. インターネット環境が日常的にある「デジタルネイティブ」世代

Z世代を取り巻く環境として、幼少期よりインターネットやスマホが普及しており、SNSが広く知れ渡った世の中で育ちました。彼らはFacebook、Twitter、Instagramなど複数のSNSユーザーであり、さらには1つのSNSに「裏垢」や「趣味アカ」と呼ばれる複数のアカウントを使い分けている人もいます。
また、直接会ったことがない世界中の人とSNS上でやり取りを行い、コミュニケーションを深めていくという特徴があります。

 
 

自宅のテレビや新聞で情報収集をしていたX世代・Y世代と大きく異なるのは、「ネットニュース」や「動画(個人が企画・制作しているものも含む)視聴」によって情報を収集し、SNS上で自分の意見やトレンドを発信していくことです。
考えを文字にすること、不特定多数の相手へ発信していくことに対してあまり抵抗を感じない世代とも言えます。

参照)AMP[アンプ] – ビジネスインスピレーションメディア「Catch the business inspirations.」

3. 「価値観や人間関係の多様化」を受け入れている世代

①ブランドよりも個性や自分らしさを重視する

Z世代の方は、個性・自分らしさを大切にする傾向にあります。世界中でネット社会となっていることからニュースなどで世界の情勢を知る機会も多く、学校や親からも「考え方や個性が他の人と違うことは当然」といった教育を受けていることもあり、多様な価値観を理解し、受け入れる力が備わっています。
近年は女性の社会進出やLGBTQも注目されると同時に、自分らしさを大切にすることが重要とされており、周りの方の個性を尊重して受け入れるだけでなく、自分の個性をアピールする人も増えています。また、Z世代は友人を男女ではなく、一個人として認める傾向があります。
さらに、家庭においても、育児や家事を性差に関係なく分担した方が良いと考えるなど、男女平等の意識が高いことが特徴です。

②「もの」よりも「体験・経験」に価値を見出す

Z世代の方は、「もの」ではなく「リアルな体験・経験」を重視し、お金を消費する傾向にあります。
例えば、好きなアーティストやアイドルのコンサートやサイン会に行く、自宅で好きな時間に映画配信サービス(VOD)を利用して映画を観ることです。
デジタルの情報が簡単に手に入るようになったことで、デジタル化されていない「コト消費」に価値を見出していると考えられます。

   

③情報の出所やコミュニティを重視する

  

情報リテラシーが備わっているZ世代は、ネット上の溢れかえる情報の中から、何らかの情報収集を行う際に「何が正しくて、何が間違っているのか」を見分けられる能力が他の世代よりも長けている傾向にあります。
インターネット検索よりも、SNSで情報を検索したり、インフルエンサーやYouTuberから情報を得たり、情報の出所を明確にさせ、正しい情報を吸収し、間違った情報は切り捨てるという考え方をします。
また、社会的取り組みや社会問題等に対しても仲間と意見交換し、「共有・共感」に価値を感じる傾向が強いと言われており、人とのつながりやコミュニティを重視する傾向が高いと言えます。

   

④リアリストで安定志向であるす

Z世代は、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災など、多感と言える年齢において社会や経済が不安定となった状況や、親世代がシビアな社会環境に置かれている状況を目の当たりにしました。
そのため、社会問題への興味や関心が深く、他世代の方よりも安定志向(保守的でリスクを避ける志向)であり、貯金に高い関心を持ち、長期的な価値や投資に焦点を当てることが特徴です。

4. Z世代が持つ5つの仕事観

①仕事とプライベート領域を融合する

Z世代は働くことと私生活の充実のバランス(ワーク・ライフ・バランス)を大切にします。また、この考え方を発展させた働き方も支持しています。例えば、仕事と私生活を連動させ、双方の充実を求める「ワーク・ライフ・インテグレ―ション」や、仕事とプライベートの時間をより隣り合わせで捉える「ワーク・ライフ・ジェンガ」という考え方です。
どちらも、仕事とプライベートに境界線を設けず柔軟に考えており、生き方をより統合的に見ている点で共通しています。
Z世代では、65歳以降も働くと想定している方が多くいます。
彼/彼女等の多くは、キャリアをマラソンのように捉えており、生涯で1つの仕事に就くものではなく、途中で道筋やペースを変えながら何度かの休憩を挟む”波”のようなものと考えています。他世代と比べると、休憩もキャリアを形成する一部として、長期的な視点で仕事や自身のキャリアを見据えており、プライベートも充実させるという考えを持つ人が多いです。

   

②多様な働き方に抵抗が無い

近年の働き方改革により、副業やリモートワークといった多様な働き方が身近になっていることで、職業を一つに限定せず、複数の仕事・活動を掛け持ちながら、多方面での活躍を目指す働き方やギグ・エコノミーに興味があります。
また、それぞれの事情や希望に合わせた働き方に対する抵抗があまりありません。
そのため、従来の日本企業で一般的だった年功序列を前提とした働き方を強いられるよりも、自分の価値に合った企業や職を探して転職することへのハードルも低い傾向にあります。

   

③企業を信頼していない

2020年のSalesforceの調査によると、ミレニアル世代の50%が企業を信頼していると回答したのに対し、Z世代では42%にとどまりました。
いずれの数字も2018年から大きく減少しています。
2019年のデロイトによるミレニアル世代の意識調査(日本版)でも、64%のZ世代が、現在の勤務先で働き続ける期間を「2年以内」と見込んでいると回答しました。世界的に見ても世代的な離職意向の高さや帰属意識の低さが読み取れます。
無理して働くということに対してネガティブなイメージを持っており、「居心地の良い職場で働けるなら、転職は良い手段である」と考える人が多いと言えます。

④安定した企業で、キャリアアップや働きがいを望む

Z世代は雇用主や企業に対して、報酬、休暇、福利厚生、安定、柔軟な働き方だけでなく、新たな成長や出世の機会も望んでいます。
GAFA(Google ・Apple・Facebook・Amazon)や大手テクノロジー企業に共通する魅力は、「キャリアアップの機会」「社会への貢献」「柔軟な勤務体制」と言われています。
また、お金を稼ぐ手段が多様化する一方で、収入を第一に基準とするのではなく、働きがいや、仕事で得られる充実感を重視しています。

⑤オープンなコミュニケーションを求める

分からないことは、検索して解決できる環境で育ったため、気軽に疑問点を確認し、解決できるオープンな関係を整えることを求めています。
また、Z世代は競争して出世をすることより、お互いの個性を尊重し、助けあう関係を好む傾向にあり、厳しい指導や、ワンマンタイプで部下を引っ張る支配型の上司よりも、話をしっかり傾聴し、丁寧に指導し、メンバーがモチベーション高く、自分の課題として主体的に取り組めるようフォローする上司を好みます。

4. まとめ

Z世代の価値観や仕事観は、ダイバーシティ&インクルージョンを普及・定着させていく考え方と非常に似ています。
彼らの価値観や仕事観を理解するにあたり、Z世代との双方向のコミュニケーションによって、彼/彼女らの価値観を打ち明けてもらうことで、企業も従来の考え方をアップデートしていく必要があると考えました。
様々な世代の異なる考え方・価値観を持つ社員、パートナーが、働きがいを持ちながら成長していただけるよう、お互いを受け入れる気持ちを持つような働きかけや情報発信を積極的に実施していきたいと思います。
次回はZ世代の内面やコミュニケーションを円滑に取るコツをご紹介します。


         

執筆者
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。